Macy’sは、交通アクセスのいい10数店舗のメインフロアーで
”The Market@Macy’s”を展開している。
The Market@Macy’sとは、
百貨店内の限られたスペースを利用したユニークなポップアップ店舗で、
食品以外のカテゴリーにおける各ブランドが参加できる。
エンターテイメントやメディアなど、
小売業以外のブランドも、サービスを提供する企業や
国際ブランドと一緒に参加することも可能である。
The Market@Macy’sの利用規定は次のようになっている。
- Macy’sとの収益シェアモデルではなく、売上は100パーセント参加ブランドが保持
- レンタル期間は1ヶ月から3ヶ月間
(11月から1月のホリデーシーズンは、3ヶ月間滞在する必要があり)
- 参加するブランドは、The Market@Macy’sに入る30日前までに、
全費用を事前に支払う
- 消費者は、Macy’sのクーポンは使用できない
- 各ブランドが提供する独自のプロモーションオファーは可能
百貨店ビジネスが衰退しているとはいえ、
2人に1人は1年に1回以上Macy’sでショッピングをしていると言われており、
The Market@Macy’sへの参加は、企業にとってブランドの露出を高める
絶好の機会となる。
また、Macy’sから常勤の専用営業担当者のサポートがあり、
フルサービスの小売体験も可能となる。
さらに、一番大きなメリットとして、日常の販売データ、歩行者のトラフィック、
顧客関与率、コンバージョン率などの豊富なリアルタイムデータの分析結果を
Macy’sから受けることにより、最適化された販売戦略のテストトライアルが
可能となる。
Amazonがアパレル事業にも注力している現在、
Macy’sとしては、アパレルを中心としたビジネスモデルからの脱却、
新規顧客層の開拓などが期待できる。
The Market@Macy’sでは、b8taのプラットフォームが利用されている。
2015年に設立されたb8taは、小さなビルの1階などそれほど大きくないスペースを利用し、
スタートアップ企業などが独自に開発、製造した新技術プロダクト等を展示、
マス販売前に消費者の関心動向などを把握する場として急成長してきている。
訪問者が気に入れば、その場でプロダクトの購入も可能。
プロダクト説明やデモで使うタブレットを各商品に配置し、
内臓カメラを利用した訪問者の滞在時間や視線動向、
クリック履歴などのデータを取得、分析して参加企業にフィードバックする
プラットフォームを持っている。
参加企業は、これらのデータ分析から訪問者の関心など
詳細な情報を把握でき、プロダクトの改良やマーケティングなどに
役立てることができる。
Macy’sは、2018年6月にb8taに少額出資を行い、
b8taが提供するプラットフォームをThe Market@Macy’sで応用している。
ところで、ニューヨークやサンフランシスコなどにある
このThe Market@Macy’s内に、Facebookが昨年11月から今年の2月2日までの
期間限定で、小さなポップアップ店舗を開いている。
FacebookとMacy’sのタイアップは、実店舗を展開したことのない中小企業が
Macy’sという場を借りて注目を浴びることを実現。
アパレル、アクセサリー、美容、娯楽、家具、装飾品、文房具、
ギフト、テクノロジーなどを販売する約100-150のブランドが参加している。
今までソーシャルメディアでのブランディング、販売に依存してきた
多くの中小企業にとって、Macy’sという物理店舗での展開が可能になると同時に、
Macy’sにとってもさらなる新しい顧客層の開拓につながると期待される。
さらに、Facebookにとっても、物理店舗への展開による
新たな広告収入が期待できると見られる。
(各イメージは、Macy’s、b8taのホームページからの抜粋、および筆者撮影)