あけましておめでとうございます。
トンゼミのトントンです。
女性のキャリアとライフスタイルを支援する女性誌「日経WOMAN」が
この1年に各界でもっとも活躍した働く女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017」に
8人の受賞者8人を決定しました。
その受賞者の中に「食ビジネス革新賞」で受賞された小林 せかいさんがいらしゃいます。
2015年にオープンした東京・神保町の「未来食堂」という街の中の食堂。
店主一人で、客席12席のビジネス街のランチは、
とうてい普通では廻していくことはできないもののメニューは日替わりで1種類だけ、
かつユニークな仕組みで11時~14時の昼のピークタイムで最高7回転させるなど
順調に顧客が増えている一方で売上原価率は25%前後と低い数字を実現しています。
未来食堂その超合理的な運営システムは、
著作「ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由」に描かれています。
東京工業大学理学部数学科を卒業後、日本IBM、クックパッドで
計6年間エンジニアとして勤務後、さまざまな厨房での1年4ケ月の修行期間を経て
2015年9月に東京都千代田区一ツ橋に「未来食堂」を開業されています。
その未来食堂の経営の仕組みの中には
「あつらえ」「おすそ分け」「まかない」「だだめし」「さしいれ」など
独自システムがあり、たとえば「あつらえ」は通常の定食にプラスして小鉢を選べるシステム。
「おすそ分け」はタダで飲み物を持ち込めるかわりに
顧客や他のお客さんにおすそ分けするというシステムです。
とりわけ、経営基盤になっているであろう「まかない」というシステムが、
後述しますがエンジニアとして働かれた経験から
発想されたシステムであるとおっしゃられています。
その「まかない」というシステムは、50分間従業員として働くと、
1食分無料で食べられるという仕組。
50分間、配膳や食器洗い、会計などの飲食店業務をおこない、
手伝いが終了すると、対価としてまかないを食べることができるというもの。
未来食堂は1食900円なので、まかないさんにとっても、時給に換算すれば
約1,000円に相当するわけで、都内の飲食店バイト平均時給を考えると
きわめて妥当な数字ということになります。
ところが、これは金銭で支払われるのではなく、食材による提供です。
一般的に飲食店で言われている「原価3割」に照らし合わせてみると、
実質300円で1時間手伝ってくれる人がお店にてくれるということになるわけです。
クラウドリソースという概念はタスクを細分化し、一人一人が負担なく働くことで、
全体としておおきなタスクをこなす作業スタイルのことで、
たとえば、電話帳のコピーな単純作業を500人で分担し、
一人の作業時間を5分などの短時間にすることで、誰にでも手伝ってもらいやすくること。
これにより暇なときにちょっと働けるので、働く側にとっては都合がよく、
手軽に参加して報酬をもらう新しい働き方であり、
この発想から未来食堂の「まかない」システムは飲食業界における
クラウドリソースだと説明されています。
食堂での労働を50分単位とすることが、タスクの分散化であり、
参加しやすくなる仕組みを作ることで参加する負荷を下げ、
結果としてたくさんの労力が集まる仕組みにつながっています。
実際、この「まかない」参加の管理は50分枠ごとにグーグルカレンダーで管理されて、
一般にも公開されています。
一般に公開されているのはこれだけではなく、プレスリリースはもちろん、
平成26年度 創業支援金(創業促進補助金)に採択された未来食堂の
事業計画書原本や月次決算書までも。
つまり未来食堂という経営手法はオープンソースな飲食ノウハウなわけです。
この未来食堂のオープンソースという基盤のもとのクラウドソースの概念での営業スタイル。
「一人だからできない」「忙しいからそのうち」というネットショップで
泣き言を言う前に、見習っていきたいものです。
ちなみに、まかないをするための条件は「一度以上お客様と来店した頂いた方」
としていますが、労働の報酬として金銭が発生していない為に
「雇用」には該当せず、したがって年齢制限もなく、
この「まかない」システムはお客様でも従業員でもない「第三の立ち位置」となります。
「未来食堂」システムの本質であろう「見たこともないものを生みだす力」
として「アイデアが現実になるまでの流れ」として、
次のような流れで著者は論を進めています。
A 息苦しさを見つめ続ける or B 情景をものすごく細かく想像する
↓
「1枚の絵」がひらめく
↓
現実に落とし込む(定石編)
↓
現実に落としこむ(独自編)
100人中100人が「そういうのいい感じだよね」と
共感できる既視感のあるアイデアを、なぜ、「あなたが」実行しなければならないのでしょうか。
誰からも褒められるアイデアは危険です。
なぜならそのアイデアは、誰もが想像できるレベルの範疇にしか留まっていないということだからです。
このなぜ、「あなたが実行しなければならないのか」が
未来食堂を現実にした根幹と感じます。
ビジネス街で一人で食堂の経営ができるはずがないと言われ、
人と人が向き合い、世間の常識を超えて、ただその人にとってふさわしいものを
差し出す「誰もが受け入られ、誰もがふさわしい場所」
そんなの無理だと笑われて、それでも形になった1つの現実解が、未来食堂です。
是非、ネットショップの未来食堂を見つけてみてください。
written by ネットショップ経営戦略支援コンサルタント :トンゼミ@トントン